クロスオーバーバイクとツアラーバイク
昨日、国内発売が発表されましたVストローム250SX。スズキにはロングセラーモデルのVストローム250 があり、同じ名前を冠するモデルながらいったい何が違うのか?まだVストローム250SXにはモーターサイクルショーで跨ったことしかないですが、発表された装備や諸元などを比較して、早速、同じVストローム250を机上対決させてみました。
まず、SXのエンジンですが、冷却方式に油冷を採用した油冷単気筒 SOHC4バルブ249cm3で26PSを発生させます。
対して、Vストローム250は、水冷2気筒SOHC2バルブ248cm3のエンジンを搭載し、24PSを発生します。
わずか2PSの違いですが、24PSからですと8%も馬力がアップしていることとなり、その違いは結構大きいです。実際、同エンジンを搭載するジクサー250に乗った時に、Vストローム250より早いなぁと実感しましたし、最高出力を9,300回転で発生させるということで、Vストローム250の最高出力回転数の8,000回転よりも1,300回転も上とのことで、かなり良く回るエンジンで、本当に単気筒なの?と驚いたくらいでした。バルブ数は2気筒のVストローム250が2バルブなのに対して、単気筒のSXは4バルブになります。
実は、このエンジンの違いが大きくて、SXは単気筒ということもあり、エンジンが軽く、そして高回転まで軽く吹け上がる感じに対して、Vストローム250の方は2気筒(ツイン)エンジンということもあり、重量はありますが、SXよりもパルス感が感じられるエンジン音で、吹け上がり感はややゆっくりしていてSXには劣りますが、その代わり粘り腰でゆっくりと力を出していくタイプです。
ですので、最大トルクは2.2kgf・mと両車とも同じ数値ながら、SXは最大トルクを7,300回転で発生させ、Vストローム250は6,500回転と、800回転低く発生させます。
このエンジンの違いは車重にも表れていて、2気筒のVストローム250の車両重量が191kgに対して単気筒のSXの方は164kgと、27kgも軽いのが特徴です。これは、エンジンだけでなくSXは他所でも軽量化をはかった結果かと思いますが、実は、SXが積むEJA1という形式のエンジンはジクサー250に乗った際に感じたのですが、軽い車体にマッチングしたエンジンだな、と感じました(ジクサー250は154kg)。
軽い車体を軽く高回転まで回るエンジンで走らせることによって、軽やかなスポーツ走行を楽しめます。
逆にVストローム250は高回転域まではエンジンがあまり回らないですが、250ccとは思えない車格と、どっしりとした感じで安定感があり、高速など走りやすく、そして、スロットルを回していく分、ゆっくりと力が付いてくる感じで、山道などゆっくり走りたいときにとても重宝します。
メーターは両車ともにフル液晶のデジタルメーターを採用し、スピードメーター/タコメーター/オドメーター/デュアルトリップメーター/ギアポジションインジケーター/燃料計/時計を表示します。パッと見では、後発のSXの方が今風で各情報が見やすい感じがいたします。
さて、装備の方はといいますと、もともとVストローム250の方は、ウィンドスクリーンやナックルカバー、センタースタンドにアンダーガード、リアキャリア、そして純正のサイドケースを付けられるサイドケースアタッチメントや12VのDCソケッなど、250ccでリーズナブルな価格設定ながら装備が充実していているのが特徴ですが、SXの方も大型のウィンドスクリーンのほか、ナックルカバーにアンダーガード、そしてリアキャリアにイグニッションオンでブルーに点灯するUSBソケット、ワンプッシュで始動が可能なスズキイージースタートシステムなどが装備され、こちらも充実した装備です。
さて、車格ですが、大型のVストローム250の2,150mm ×880mm × 1,295mm(全長 / 全幅 / 全高)に対して、SXは2,180mm×880mm ×1,355mmとVストローム250よりも大きのには驚きです。車重が軽いので車格もコンパクトだろうなと思っていましたが、予想外でした。特に全高はVストローム250に対して60mmも高いです。
実は、シート高もVストローム250の800mmに対して、SXは835mmと、35mmも高いのです。実際、Vストローム250は数値よりもシートが低く感じられ、跨いでベタ足になるような感じでしたが、SXを跨りますと如実に結構シート高があるな…と感じられます。あと、Vストローム250のシートは一体型なのに対して、SXはセパレートタイプになっています。
Vストローム250SXの「S」はスポーツ、そして「X」はクロスオーバーを意味するということで、”未舗装路を自由に楽しむ”というコンセプトがSXには含まれているのです。ですので、フラットではない石などが転がる凸凹の未舗装路を走るには、エンジン下部などが当たらないように車高、(地上最低高)を高くする必要があり、またある程度、車高を高くして車両の中心点を上げることでスタンディングなどもしやすくなります。ですので、地上最低高もSXの方が45mmも高いです。そして、前後タイヤが17インチのVストロームに対して、SXはフロントが19インチ、リアが17インチになります。
シートもセパレートタイプで、ライダーの体をホールドしやすいSXはまさにその軽い車体と軽く吹き上がる単気筒エンジンを活用してワインディングなどではスポーツ走行を楽しめます(特に下り坂は楽しそうです)。逆にVストローム250は”スポーツアドベンチャーツアラー”ということで、ゆっくり長距離走行も楽しむツアラー的な感じです。燃料タンク容量もVストローム250の方が5Lも大きいです。
Vストローム800DEもそうでしたが、新たなVストロームシリーズは未舗装路の走行も楽しめるようなデュアルパーパスタイプがコンセプトになっているようです。但し、SXはブロックタイプ系のタイヤを装着としながらもブロックタイヤではないですし、キャストホイールですので、本格的にオフロードを走るのは少々キツイので、あくまでも未舗装路も舗装路も楽しめるクロスオーバータイプという感じです。もちろんキャリアなども装備しツーリングはしやすいですが、一部未舗装路があるような場所に行きながら、峠道などでスポーツ走行を楽しむようなバイクです。
Vストローム250の方は、高速を走り、山道や酷道などを走り楽しむ、まさにツアラーバイクという感じです。未舗装路を走るのも、例えに語弊があるかもしれませんが、SXが軽く吹き上がるエンジンを活用してモトクロス的に走るのに対して、Vストローム250はその足付き性の良さを生かして走るエンデュロー的な感じでしょうか。
あと、大きな違いとして、車両価格ですが、Vストローム250の646,800円(税込:2023年8月現在)に対して、Vストローム250SXは、なんと、569,800円と77,000円も違うことです。これは、大変魅力的です。
同じVストロームながらまったくキャラクターが異なる2台。未舗装路走行やスポーツ走行を楽しみたく、また出費を抑えた方にはSXが、高速を使った長距離ツーリングに行き、また足付きなどに不安がある方はVストローム250がお勧めかもしれません。下記に諸元表を対比させてみましたので、是非、ご参考ください。
Vストローム250SX
メーカー希望小売価格(消費税10%込み):569,800円(消費税抜き518,000円)
Vストローム250
メーカー希望小売価格(消費税10%込み):646,800円(消費税抜き588,000円)
Vストローム250SX | Vストローム250 | Vストローム250SX – Vストローム250 | |
全長(mm) | 2,180 | 2,150 | 30 |
全幅(mm) | 880 | 880 | 0 |
全高(mm) | 1,355 | 1,295 | 60 |
軸間距離(mm) | 1,440 | 1,425 | 15 |
最低地上高(mm) | 205 | 160 | 45 |
シート高(mm) | 835 | 800 | 35 |
装備重量(kg) | 164 | 191 | ▲27 |
燃費消費率(km/L)[60km/h] | 44.5 | 38.9 | 5.6 |
最小回転半径(m) | 2.9 | 2.7 | 0.2 |
エンジン | 油冷・4サイクル・単気筒 / SOHC・4バルブ | 水冷 ・ 4サイクル ・ 2気筒 / SOHC ・ 2バルブ | – |
総排気量(㎤) | 249 | 248 | 1 |
圧縮比 | 10.7 | 11.5 | ▲0.8 |
最高出力 | 19kW 〈26PS〉 / 9,300rpm | 18kW 〈24PS〉 / 8,000rpm | – |
最大トルク | 22N・m 〈2.2kgf・m〉 / 7,300rpm | 22N・m 〈2.2kgf・m〉 / 6,500rpm | – |
燃料タンク容量(L) | 12 | 17 | ▲5 |
ブレーキ形式(前/後) | 油圧式シングルディスク[ABS] / 油圧式シングルディスク[ABS] | 油圧式シングルディスク[ABS] / 油圧式シングルディスク[ABS] | – |
タイヤサイズ(前) | 100/90-19M/C 57S | 110/80-17M/C 57H | – |
タイヤサイズ(後) | 140/70-17M/C 66S | 140/70-17M/C 66H | – |
価格(税込) | 569,800円 | 646,800円 | ▲77,000円 |
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