残念ながら2024年7月生産終了モデルとなってしまいましたホンダのCB1000R。CBR1000RR用のエンジンをリセッティングして搭載したネイキッドバイクで、スーパースポーツバイクのエンジンでネイキッドバイクというストリートファイター系のバイクです。
水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒998cm³のエンジンは最高出力で、107kW[145PS]/10,500rpmという高出力を発生し、車重は213kg(ブラックエディションは214kg)という軽量さ。全幅が790mm、全高は1,090mmとリッターバイクとしてはかなりコンパクトな車体です。
タイヤはミシュランパワー2CT+で、街乗りからスポーツライディングまで楽しめるオールラウンドなタイヤを装着しています。
シート高は830mmながら跨るとサスが沈み込み、シート前端が細身のこともあり、思ったほどには足付きは悪くないと感じました。
目に入りますディスプレイは5インチのTFT液晶で、まるでスマホを横にしたようで、無機質的に数字や英語が表記されている感じです。ガソリン残量やギアポジションなどがの情報が、ぱっと見、すぐにわかりづらいのが少々難点です。なお、スマートフォンとの連携によるHonda RoadSyncで、スマホのアプリや音楽を操作することができます。
機能的には、4種類のモードから選べるライディングモードのほか、クイックシフターやスロットルバイワイヤシステム、トルクコントロール、アシスト&スリッパークラッチ、グリップヒーターなどを装備。どちらかというと快適性よりも走り的な機能が充実している感じです。
なお、残念ながらリア下の収納スペースは全くありませんでした。
また、NEO SPORTS CAFÉとうたっていることもあり、ヘッドライトはLEDながら丸目系でノスタリジック感を演出しています。
さて、エンジンをかけてみますと、図太いリッター直列4気筒サウンドが腹下に響き渡ります。
走り出してみますと、アシスト&スリッパー®クラッチのおかげでクラッチ操作が軽く、スルスルと極低速域から走りやすいです。そして、その走りやすさ、そしてその乗りやすさがずっと続くのがこのバイクの凄さ。まったくギクシャクすることなく、リニアなエンジン特性により、どの回転域でもスムーズに走らせることができます。
そして、回転を上げていくと、どこかの回転数でグワッと加速するのではなくて、そのまま、ビッグトルクでぐんぐんバイクを加速していき、あっという間に結構な速度域に達してしまいます。なので、乗っていて疲れないし、安心感も強いですし、とにかく走りやすい。さすがはホンダさんといった感じです。
実は、乗る前はCBR1000RR用のエンジンをリセッティングして搭載していてネイキッドバイクで145馬力もあるということもあり、よくありがちなドンと加速するよな過激なストリートファイタースタイルのバイクを想像していたのですが、全くそういうことがなくて、とてもフラットで乗りやすいのに驚かされました。さすがはホンダさんといった感じです。
そのエンジンをメインにコンパクトな車体に、マスの集中化がはかられていることもあり、乗りやすく、そして切り返しや取り回しもしやすいため、街中はもちろん、ワインディングなどではかなり楽しめるかと思います。
実は、乗る前には、あまり突出したキャラクター性やアピールポイントが無いなぁ〜なんて思っていましたが、実際に乗ってみると、リッター直4で145馬力も発揮するバイクながら、その乗りやすさにびっくり。ただ、走っていて目にするハンドル周りや液晶メーターがシンプルで170万円近いバイクの割りに高級感を得られないのが残念。同時に同じスタイリングでCB250RやCB125Rなどの小排気量車も発売されたことにより、より一層孤高のステイタス感を得づらかった感もあります。
スイングアームマウントリアフェンダーや2本のテールパイプを配置したマフラーなど、デザインのこだわりは感じるのですが、積載性などを考えますと、やはり170万円近い価格ながら、アドベンチャーバイクのような旅的ではなく、また、スーパースポーツバイクのようなサーキットライクなどではなく、なかなかにその使用シチュエーションが見えづらい感じでもあります。
それは、一時ブームとなったストリートファイター系のバイク全般に言えることで、スーパースポーツバイクに乗っていたライダーが年齢を重ねて、身体的に体力的に、もっと快適に、でもエンジンパワーは欲しいといったニーズでストリートファイター系のニーズが高まったのですが、昨今はそこから、より楽なアドベンチャーバイクや、速さよりもテイストを楽しむクラシカルスタイルのバイクにニーズが高まっている中、ストリートファイター系のバイクのニーズが減少している部分でもあります。
今回、このCB1000Rのほか、HAWK11やCB250Rが生産終了モデルとなってしまいました。未来的なデザインにこだわった部分はあったのかとは思いますが、今、売れている、Z900RSやGB350といった潮流とは違うテイストの部分で、なかなかに今のニーズに乗れなかったのかな…とも思いました。少し、先に行っていたバイクかもしれませんので、もう少ししたらその評価が高まるのかもしれません。そういう意味では、個人的には中古車市場でリーズナブルであれば、「買い」のバイクの一つだと思います。
全長/全幅/全高(mm):2,120/790/1,090 シート高:830mm 車重:213kg(ブラックエディションは214kg) 水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒 998㎤ 最高出力:107kW(145PS) / 10,500rpm タンク容量:16L カラー:グラファイトブラック 価格:1,716,000円 カラー:ボルドーレッッドメタリック 価格:1,670,900円
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