2023年式 カワサキ ZX-4R SEに乗ってみました。

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4気筒400cc 77PS(ラムエア加圧時80PS)のスポーツバイク

80-90年代に各メーカーから多くの車種が発売されていました4気筒400cc。日本の免許制度で普通二輪免許(昔は中免とも言われていました)で運転できるバイクが400cc(㎤)までということもあり、80年代では401cc以上のバイクに乗るための大型免許(限定解除)は教習所では取れず試験場での一発試験のみということで合格率は数%と超難関だったこともあり、多くのライダーは普通免許のみの取得に留まり、その中で運転できる最も大きな排気量の400ccに人気が集まりました。

ただし、大型免許が試験場で取得できるようになり、また、コスト的な面からも2気筒(ツイン)エンジンの台頭により、日本国内特有の免許制度の中で隆盛を誇っていました4気筒400ccのバイクは、各モデルのグローバル化もあり徐々にモデル数が減っていきました。

その中で、今回、久しぶりに4気筒の400cc(㎤)として発売されましたカワサキのZX-4R。水冷4ストローク並列4気筒DOHC 4バルブ399㎤のエンジンを搭載し、最高出力はなんと77PS(ラムエア加圧時80PS)という高出力を、14,500rpmという高回転で発生させます。

80年代の400ccはメーカー間の熾烈な馬力合戦や二輪事故の多発という背景もあり、400ccは59PSという自主規制が敷かれました(250ccは45PS)。現在は自主規制こそなくなってはいますが、それでも77PSといえば一昔前のナナハン(750cc)の馬力で驚きの数字です。最大トルクも39N・m(4.0kgf・m)/13,000rpmというかなり大きいトルクを発生させます。

その数値の大きさから馬力が特出されることが多いZX-4Rですが、基本的には同社のZX-25Rと同じボディを使用していることもあり、車体はかなりコンパクトで車重も190kg(ZX-4RR KRT EDITIONは189kg)と、4気筒バイクながらかなり軽量なのもポイントです。

もちろんハンドルはセパレートハンドルで、シートはセパレートタイプ。レーシーライクなスタイルですが、4気筒でありながらタンク幅がスリムで、バイクにまたがって威圧感を味わうことはないです。

ポジションはもちろん前屈みにはなりますが、思ったほどの前傾ではなく(YZF-R7の方が前傾度がきついです)、意外とハンドルの切れ角もあり、ガチガチのレーサータイプではなく、普段乗りでも苦なく楽しめポジションです。この辺りは(レースの絡みから)ガチガチのレーサースタイルだった80年代の400ccモデルとは違っています。

TFTカラー液晶のメーターパネルには斜めにドンと目立つように回転数の表示があ利、高回転まで回るという誇らしさを感じます。なんとレッドゾーンは16,000回転からになっています。そして、SPORT、ROAD、RAIN、RIDERの4つのライディングモードが選べます。

メーターの左側にはラムエアシステムの表示があります。

グリップ周りはライディングモードの切り替えスイッチ以外はオーソドックスな感じですが、その分、スイッチが扱いやすいのが嬉しいところです。

シート高は800mmということでZX-25Rの785mmより少し高いですが、スポーツ系らしくシートは薄めで前端が絞られていますので、ベタ足にはなりませんが足つき性はまずまず良い方だと思います。

そして、フロントにはシングルディスクブレーキのZX-25Rと異なり、デュアルディスクブレーキを装備。それだけで、25とは違うんだぜ、というような気配を感じてしまいます。

リアシート下はこの手のバイクとしては結構深さがあり、ETCの車載器のほか、ちょっとした工具と車検証入れなどが入りそうです。

さて、キーを回してエンジンをかけますと4気筒エンジンならではの図太いサウンドが鳴り響きます。「おぉ!すごい!」400ccでこの音が聞けるとは…と少々感激モードになりました。

さて、早速、軽くて繋ぎやすいクラッチを繋いで発進させました。

「あれ?」

実は、4気筒で77PSもあるから低速からグワッといくのかな…と勝手に想像していましたが、低回転は正直、少々緩い感じのアクセルレスポンス。確かZX25Rもそうだったなぁ…と思いつつ、トロトロと緩いレスポンスで狭路を走り幹線に出てアクセルを開けると、いやビックリ!5千回転からパワーが出だして、6千回転からグワッと身体を持っていかれるくらいの加速が始まり、そのまま勢いよく1万回転以上グオーンと回っていきます。

4気筒らしくシルキーなエンジンの回り方で、高回転になると乾いたクォーンというサウンドに変わります。いけないいけない、うっかり法定速度を超えてしまうところでした…(汗)これで、最高出力が14,500回転で発生とは、空恐ろしいです。今回、残念ながら高速道路は走れませんでしたが、この加速力があれば高速での追い越しも楽ですし、このジェット機みたいな加速を楽しめそうです。

フロントのブレーキがデュアルディスクということもあり、ZX-25Rに比べて若干フロントヘビーかな?とも感じましたが、ワインディングロードでは軽快な走りでコーナースピードを稼いで走る25Rに比べて、コーナーに突っ込んでデュアルブレーキのストッピングパワーでグッと減速してコーナー出口からその加速力でスピードに乗るというような、ビッグバイク系の走りが楽しめるバイクかと思います。

但し、前出しましたように6千回転以下は緩いので、それ以下に回転を落とさずにコーナーリングをするというテクニックも要求されます。そういう意味ではリスクの高いワインディングではなく、サーキット向けのバイクかと思います。標準装備でなんとフロントスライダーも付いています。但し、33,000円高のZX-4RRには付いていません。

それと、バイクのキャラクターに対して意外とサスペンションは柔らかく感じました。その分、市街地では段差などをこの手のバイクとしては吸収してくれて走りやすかったですが、フロントサスペンションはスプリングプリロードの調整機構を持っていますのでサーキットなどではもっと足回りは硬くした方が良いように思いました。あと、クイックシフターが付いています。市街地ではほぼ使いませんが…

積載性的には、スポーツバイクらしくセパレートタイプのリアシートの座面は小さめですが、ガチガチのスポーツ系のビッグバイクに比べるとまだ面積もあり、また、リアフェンダー下(リアウィンカーそば)に簡易ですが荷がけフックがあるのが嬉しいところ。

これによりシートバッグであれば、引っ張ってテンションが掛けやすいと思います(但し、前側の固定ロープはタンデムステップのところまでかなり引っ張ることになりますが…)。また、USB電源が標準装備されているのも嬉しいですが、アドベンチャー系のそれと違ってハンドル周りではなくシート下にあるため、スマホなどを充電しながらナビとして使用するのは難しい感じです。

標準装備のタイヤもダンロップのSPORTMAX GPR300ということで、バイクのキャラクター的にはややストリート向けのタイヤが装着されており、サーキットを走るなら33,000円高になりますが、ZX-4RR KRT EDITIONの方がお勧めかと思います。プリロード調整機構付きのSHOWA SFF-BPフロントサスペンション&Ninja ZX-10Rと同タイプのフルアジャスタブル SHOWA BFRC-lite リヤサスペンション、トラコンを装着し、車重が1kg少ない179kg。と言いますか、33,000円差であれば、正直、下取りのことも考えますと、Ninja ZX-4RR KRT EDITIONの方が良いような気がしました。但し、ZX-4RRにはUSB電源ソケットとフレームスライダーは付いていません。もちろん供給量的な部分もありますが、33,000円差でこれだけ内容が違うならZX-4R SEの存在価値が薄れてしまうのでは、と心配さえしてしまいました。

サーキットなどでのスポーツ走行メインにはNinja ZX-4RR KRT EDITIONを。街乗りやツーリングにはUSB電源ソケットやフレームスライダーが付いて、サスペンションも柔らかめのZX-4R SEで、と差別化しているのかもしれませんが、やはりモデル的にはスポーツバイクで、それであればスポーツ走行を楽しみたいですし、で、あればNinja ZX-4RR KRT EDITIONの方がスポーツ走行用の装備が充実しています。ちなみに、走行中で6千回転を超えるとメーターに表示されているギアの数字がピカピカと点滅しました。まだまだ数千回転も回せるのですが…また、5千回転以下の低速域を多用する市街地や山間部の狭路などでのツーリングの走行時には、中高回転型の同バイクの良さは活かせないかな…とも思いました。

Ninja ZX-4RR KRT EDITION

久しぶりの400cc4気筒のニューモデル。しかもスポーツ系バイク。注目されて当然ですが、ただ、80年代にZX-4RほかCBRやFZ、GSX-Rなど一世を風びした400cc4気筒バイクは限定解除という難関があったために中型免許のみのライダーがこぞって購入した(各モデルも格好良かったですし)という背景があり、大型免許所持率が高い現在、あえて250ccとは違い車検のある400ccの4気筒を購入する方々がどれくらいいらっしゃるのかな?という部分が懸念です。ネイキッドにはなりますが、ZX-4RRに+121,000円出せば同社のビッグバイクで126PSを発生させるZ900が購入できますし、

Z900

253,000円高にはなりますが、同じスポーツ系で126PS(ラムエア加圧時132PS)を発生するNinja ZX-6R KRT EDITIONもあります。

Ninja ZX-6R KRT EDITION

ただ、それなりに価格差がありますので、普通免許で乗れる400ccというよりは400ccというカテゴリーでのスポーツバイクと考えれば110万円と価格的にも訴求力はあるとは思うのですが、やはり大型免許を持っていたら見栄的なものもありビッグバイクに乗りたいものです。

もちろんそのような背景も分かっていてカワサキが発売した400cc4気筒。現状のグローバルなマーケットを鑑みますと東南アジアなど国外の市場がメインかとは思いますが、国内市場でどれだけの支持を得られるか興味深いスポーツバイクです。

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