■2023年式 スズキ Vストローム800DEに乗ってみました。

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実はビッグオフローダー(DR)です

新たな水冷4ストローク2気筒DOHC4バルブ 775㎤のエンジンを積んだアドベンチャーバイクのVストローム800DE。 DEとはデュアル・エクスプローラーの略で、オンもオフのどちらも…という意味らしいです。パッと見は80年代に発売されていた同社のDR750に似ています。

スズキ DR750

エンジンは直列2気筒のVストローム650などとは違う並列2気筒のパラレルツインエンジンを搭載。最大出力は60kW〈82PS〉 / 8,500rpm(Vストローム650は、51kW〈69PS〉 / 8,800rpm)で、最大トルクは76N・m〈7.7kgf・m〉 / 6,800rpm(Vストローム650は、61N・m〈6.2kgf・m〉 / 6,300rpm)を発生します。

全長が2,345mm で全長が 975mmと、大柄のVストローム650よりも大きく、実際にまたがってみますと結構大きく感じます。シート高も855mmとVストローム650より20mm高いですが、足付き性はVストローム650と同じような感じでした。肉厚幅広のシートの650に対して、800DEのシートの前の方が細くなっているからかな…と思いましたが、 やはり足付き性は結構厳しいです。

5インチのカラーTFT液晶では速度計や回転計、ギアポジションや燃料計のほか、電子制御のシステムの数字も表示されて情報を一括して見ることができます。暗くなるとバックが黒地になるナイトモードに自動的に切り替わります(手動も可)。

スズキトラクションコントロールシステム、双方向クイックシフトシステム、電子制御スロットルシステムなど最新のスズキインテリジェントライドシステムをガッツリ装備していますが、ハンドル周りは左グリップのところにモードセレクトボタンがあるくらいで、意外とシンプルで分かりやすいの嬉しいです。

また、アドベンチャーバイクらしく、グリップガードやアンダーガード、リアキャリアなどを装備し、そのほかUSBソケットやネジで3段階に調節可のウィンドスクリーン、そして、変わったところではハンドルバーにヘルメットホルダーが付いています。

ちなみにシート下は、ETCと小物が入るくらいのスペースがありました。雨具はちょっと辛いかも…です。

そして、エンジンをかけて驚いたのがエンジン音の静かさ。やはりパラレルツインということで、Vストローム650のようなドコドコドコというのとは違うドドドドドという感じの排気音です。

タイヤはダンロップのTRIALMAX MIXTOURを装備。ダート走破性とオンロード巡航性能のバランスを徹底的に追求したタイヤで、オフロード走行も存分に楽しめます。

さて、実際に走らせてみますと、車格の割りに車体が軽く感じられて、とても走りやすく、またハンドル操作もしやすく、取りまわしもしやすくて好印象。感覚値ですが、ハンドルがカッチリとしているVストローム650より取り回しがしやすく、軽快感がありました。車重も230kgと650に対して15kgも重いですが、ちょうど腰のあたりにシートがあたり、ハンドルの位置も相まって、バイクを降りてのUターンや取り回しもしやすかったです。

さて、走りについては、フロント21インチでリア17インチということもあり、オフロード系のビッグバイクのそれで、街中でも車格のわりに比較的走りやすいです。ロード寄りのVストローム650に対してサスペンションが少しフワフワして柔らかいかな…とも感じましたが、ワインディングを激攻めしないレベルであれば特に違和感はなく、路面のギャップも吸収してくれて、特に路面の悪い酷道などでは走りやすかったです。

そして、特筆すべきは新たに開発された775cm3パラレルツインエンジンが秀逸で、多用する4千~6千回転ではエンジン音がとても静かで、アクセルの開閉に対してとてもリニアに反応してくれスズキクロスバンサーにより振動もとても少ないので、高速での長距離走行や市街地でも疲れずに走れました。今回、日帰りで500km以上走りましたが、疲れた感はあまりありませんでした。

いたって優等的なバイクですが、それではこのバイクの特徴は、なに?といいますと、やはり未舗装路です。ツーリング中に不意に未舗装路に遭遇すると、普通は早く終わらないかとひたすら我慢して走るのですが、 このVストローム800DEに乗ってそのような道に出会うと思わずニンマリしてしまいます。スズキの電子制御システムと、オフロード走行寄りに作られ車体とリニアなアクセルレスポンス、フロント21インチのチューブタイヤ&スポークホイールのおかげで、僕みたいなオフロードビギナーでも意外と未舗装路を楽しく走れちゃいます。そしてトラコンのG(グラベル)モードが素晴らしく、スリップを許容しつつ制御してくれるので、ダートでスライドを楽しみながら安心して走ることができます。これは僕のようなオフロード苦手ライダーがダートでのスライド練習をするにももってこいなモードかもしれません。

とはいえ、やはり車重が230kgもあるビッグバイクなので、砂利道や滑りやすい狭い酷道では過信すると結構危険です。海外の広い固い土の台地を、土ぼこりをあげながら走るのが合うバイクです。そう考えると、日本国内にはそういう未舗装路が少なく、やはり砂利ダートが多いのが難点。また、どうしても同社のアドベンチャーバイクとしての完成度が高いVストローム650と比較されやすく、650に対して30万円以上も高い(2023年5月現在)ということも挙げられます。

スズキ Vストローム650XT ABS

Vストローム650はフロント19インチ、リア17インチのチューブレスタイヤを履く、まあオフロードも走れるけどオンロードメインのアドベンチャーバイクで、そのVツインの鼓動を楽しいながら、遠くに走っても疲れない、そして3桁国道くらいの酷道も比較的走破しやすい車格で、高速を走って田舎道や狭路の下道を走る、という舗装路の多い日本の道路事情(ツーリングルート事情)にとてもマッチングしたバイクで、国内を代表するミドルアドベンチャーバイクです。

それに対して、Vストローム800DEは海外試乗会もダートコースで行われたように、明確にオフロードの走破や走行を意識したバイクで、オンロード寄り(というかオンロードバイク)のVストローム650に対して、オフロード寄り(というかオフロードバイク)のVストローム800DEという感じです。両車の価格差はありますが、2013年に発売し既に10年経過しているVストローム650に比べて、800DEは電子システムが満載でエンジンもハンドリングも今風に洗練されていて、オンロード走行の基本性能も高い上でのオフロードバイクということで、こと国内で走るのであれば、高速を使った長距離ツーリングなど軽くこなせてしまうレベルであり、その上でオフロードも楽しめるバイクです。

惜しむらくは、個人的にはVストロームシリーズとして650が規制をクリアして残るのであれば、こちらの車両はDRという名でオフロードバイクとしての別ブランドで出してくれれば(650との立ち位置が混在しないのに)…と思いましたし、ツーリンング的にはやはりクルーズコントロールが欲しかったところです。あと細かいところですが、ハンドルに電子機器などを付ける場合にこのヘルメットホルダーの位置がどうしても干渉してしまうことと、それならナビホルダーをスクリーンのステーに付けたいところですが、ステーが細すぎること。あとは、スクリーンの高さ調整が手動で出来ずツールが必要といったところが、やはりアドベンチャーバイクベースではなく、オフロードバイクベースとして作られたんだなぁ…という気がします。

Vストローム800DEは、高速をガーッと走って未舗装林道に行って汗をかいて走った後で一杯のコーヒーを飲んだり、未舗装部があるような酷道などをアタックして秘境に行く…というようなツーリングが良く似合う、そういう意味では、まさにデュアルエクスプローラ−(DE)なアドベンチャーバイクで、普通のある一定のレールに沿ってのアドベンチャーツーリングで飽きたらない方には、行った先で面白そうな道があったら(先が未舗装路だとしても)ちょっと脱線して走って行ってみるといったようなワクワクツーリングが楽しめるバイクのような気がしました。


●全長:2,345mm/全幅:975mm/全高1,310mm/シート高855mm/装備重量230kg ●水冷4ストローク2気筒DOHC4バルブ 775㎤ ●最高出力: 60kW〈82PS〉 / 8,500rpm ●燃料タンク容量:20L  ●タイヤサイズ:F= 90/90-21 M/C 54H R= 150/70R17 M/C 69H  ●価格:132万円 ●カラー:チャンピオンイエローNo.2 、グラスマットメカニカルグレー 、グラススパークルブラック ※今回の平均燃費:22.2km/L

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