■2021年式ヤマハ トレーサー9 GTに乗ってみました。

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6軸IMU装備のスポーツアドベンチャー

ヤマハ トレーサー9 GTは、2015年にヤマハ MT-09をプラットフォームとしたバリエーションモデルとして発売されましたMT-09トレーサー(106.7万円)の流れとなるモデルです。流れ、という表現も変ですが、MT-09が同車名で2021年に3代目を迎えたのとは違い、MT-09トレーサー(2015年発売) → トレーサー900/GT(2018年発売) → トレーサー9 GT(2021年発売) と、都度車名が変わっています。

とはいえ、2014年、2017年、2021年と発売されました各MT-09のバリエーションモデルという立ち位置は変わっていません。そして、今回発売されました トレーサー9 GT は、前モデルの トレーサー900/GT (113.3万円/122.1万円)からSTD比で31.9万円、GT比で23.1万円のプライスアップになります。

MT-09と同様の水冷DOHC888cm3直列3気筒を搭載し120PSを発生しますクロスプレーンコンセプトのMT-09と同様のエンジンということでスポーツ性に高いモデルで、初代の「スポーツ・マルチ・ツール・バイク」のコンセプトが引き継がれています。

そういうこともあり、スポーツ性は折り紙付き。ワインディングロードはもとより、高速道路でもじっくり安定走行をおこなうというより、どうしてもアクセルを回したくなっていまいたくなるスポーツ性の高いエンジン特性を持っています。そのあたりが、安定志向が高いBMWのGSやスズキのVストロームとは違う感じで、アドベンチャーモデルの体ながら、とにかくワィンディング走行が楽しいバイクです。

とはいえ直進安定性と操縦性を両立のためCFアルミダイキャスト製のフレームが新設計され、ロングリアアームも搭載し、MT-09とはまた違う安定した操作性を達成しています。そのほか、アシスト&スリッパーを装備し、クラッチの操作荷重低減も実現しています。

そして今回、特に前モデルとの違いを感じましたのが「IMU」と電サスです。ヤマハの「IMU」はYZF-R1にも搭載されています世界でもトップクラスの6軸の慣性計測装置で、左右、前後、上下の角度・加速度を全て検出してきめ細やかな制御を実現し、バイクの姿勢や挙動を感知して常に安定した乗り心地を実現しています。これが凄い!

ツーリングとかで長距離を乗りますと、IMUなしのバイクとの差が出ます。端的に言えば、バイクの不安定な挙動を常に制御してくれますので、とにかく乗りやすくて、乗っていて疲れません。たぶん、ウェット路面や凸凹道などを走ると、その違いはより顕著になるのではないかと思います。

そして、KYB製電子制御サスペンションが標準装備され「IMU」の情報にもとづいて走行中に減衰レベルを自動調整してくれるという優れもの。スポーツモードと荒れた路面でも快適な乗り心地のコンフォートモードの設定があり、状況により使い分けが出来ますし、あまり電子介入をされたくない場合にはOffにすることも出来ます。

そのほか、クイックシフターやD-MODE、クルーズコントロールシステム、グリップウォーマーなどの電子機器を装備しているほか、大型フロントスクリーンやブラッシュガード、2段階に調整可能なメインシート、LEDヘッドランプ、コーナリングランプなども装備していて、安全性が高まっているうえ、高速走行がしやすくなっています。

また、今回、サイドケースとトップケースの3ケースが付いたモデルで走行しましたが、サイドケースの振動を減衰するダンパー内蔵取付け用ステーが採用されているため、大型ケース着用時の不安定さが無く、走行風の強い高速も安定して走れて、荷物の出し入れなども含めてとても快適にツーリングが出来ました。キャンプツーリングなどでは、是非、利便性の高いサイドケースは付けていきたいぐらいです。

あと、特徴的だったのがメーターが3.5インチフルカラーTFTメーターが2眼なところです。個人的には、左の情報と右の情報を見るのに、ぱっと一目で見づらく視線を動かさなければならなかったため、少々見づらいな…とは思いましたが、同車のコンセプトが“Multirole fighter of the Motorcycle”(多用途戦闘機のような二輪車)と知り、なるほど、と思いました。

確かに戦闘機のコクピットのような感じで、それを知るだに戦闘機を操っているかのようなイメージを持ててとても気持ちが高揚しました。そういえば、アクセルを回すとジェット戦闘機のようなキーンという排気音がして、身体が置いていかれるような加速はまさに戦闘機のような感じです(戦闘機には乗ったことはないので、あくまでイメージですが…)。

クラス最軽量級の車両重量(220kg)も軽量なジェット戦闘機をイメージさせる感じで、その尖ったフェイスもまさに戦闘機的です。

本来、ホンダのNCにしろ、ヤマハのMTにしろ、(たぶん)なかなかグローバル的に二輪の需要が成熟して大型バイクの需要が増加しないという市場予測で特にビッグバイクの価格が高騰していく中、プラットフォームのベースを同じにしたバリエーションモデルを作ることで、単一モデルをつくるよりもコストが削減できる分、リーズナブルに提供できて需要を増やすという側面もあったと思うのですが、すでに、NCやトレーサーも初代もデルに比べてかなり値段が上がってしまいました。

当初は、トレーサーも(おおよそ)100万円で買えるアドベンチャーモデルというのも魅力のひとつでしたのが、今回はすでに約150万円台ということで、一部輸入車などと肩を並べるくらいの価格帯になってしましました。もちろん、IMUや各電子装備が付いたこともあり安全性が高まったり、前モデルのトレーサー900/GT で高額モデルのGTがよく売れた、という背景や、グローバル化による欧米と日本との物価の差異などもあると思います。

とはいえ、スズキのVストローム650やホンダのNC750Xは92.4万円からありますし、先日発売されましたトライアンフのタイガースポーツ660は112.5万円からラインナップされていますので、アドベンチャーモデルとはいえ、ロード主体からオフロード主体モデルまでいろいろな排気量で多くのモデルがありご自身のご予算やバイクライフスタイルに合わせて乗り比べられてみるのも楽しいですし、レンタルバイクで借りて乗ってみると同じアドベンチャーモデルでもそれぞれの味の違いを実感出来て面白いかと思います。

■TRACER9 GT

ブルーイッシュホワイトメタリック2(シルバー)
マットダークグレーメタリックA(マットグリーニッシュグレー)
ビビッドレッドソリッドK(レッド)

¥1,452,000

全長:2,175mm 全幅:885mm 全高:1,430mm ホイールベース:1,500mm 地上最低高:135mm シート高:810mm/825mm 車両重量:220kg 乗車定員:2名 エンジン型式:N718E エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列3気筒 総排気量:888立方センチ 圧縮比:11.5 最高出力(kW[PS]/rpm):88[120]/10,000 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):93[9.5]/7,000 燃料タンク容量:18.0L 燃料消費量(※60km/h定地走行):30.5km/L 変速機形式:6速 タイヤ(前):120/70ZR17M/C 58W タイヤ(後):180/55ZR17M/C 73W ブレーキ(前):ダブルディスク ブレーキ(後):シングルディスク

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