◾️2024年式 ホンダ CBR650R E-Clutch に乗ってみました。

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いいとこ取りのミドルスポーツバイク

水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒648cエンジンを搭載し、12,000回転で90PSを発生させるCBR650R。燃料がレギュラーガソリンというのが嬉しいところです。

セパレートハンドル装備のスーパースポーツモデルですが、ハンドルの垂れ角がそれほど低くないことから、普通に街乗りなどにも乗りやすいのが特徴です。

それでも跨がればポジションは、それほどきつくないものの前屈みになり、スポーツテイストを感じられます。シート高は810mmですが、スポーツバイクらしくシートの前端が細くなっていることもあり、数値以上に足つきが良く感じられます。

エンジンをかけると直列4気筒の太くてリズミカルなエグゾーストノートが聞こえてきます。とはいえ、リッター直4バイクのようなお腹に響く図太い音というわけではなく、ミドルバイクらしくリッター直4に比べて若干軽めの排気音を奏でます。タイヤはダンロップのロードスポーツ2を装着していました。

さて、走り出しますと、4気筒らしく癖もなくスルスルと発進。250ccか400ccかと見間違うくらいなコンパクトな車体とそれほど低くないハンドルによるポジションにより、街中での右左折やストップ&ゴーがしやすいです。

それでいて、ひとたびアクセルを回すと、リッター直4の畏怖感を感じる加速まではいかないまでも、ある程度、自分の中でコントロールできそうな、それでもグッと体を引っ張られる加速を楽しむことができ、1万回転を超える高回転まで吹き上がっていきます。

このあたりは、650ccというミドルクラスならではのライト感と直4ならではの加速感&吹き上がり感ということでのいいとこ取りをしている感じがします。

リアシートも昨今のスポーツバイクとしては広い方で、タンデムもこなせて、積載性もありそうです。

そして、リアシート下にはそこそこのスペースがあり、ETC車載器はもちろん、タオルやウェスなどは収納できそうです。

さて、注目の世界初 クラッチコントロール自動制御システムのE-Clutchですが、エンジンの右側に薄いクッキー箱くらいのE-Clutchの装置が「E-Clutch」という刻印とともに付けられていて、「おぉ、E-Clutchだ!」という感じがします。

まず、このE-Clutchとは、左手によるクラッチレバーの操作を無くしてシフトペダルのみで(6段の)変速を行ってくれる装置です。機構は違えど機能的にはクイックシフターと同じ感じです。なお、同じホンダの自動変速装置であるDCTとの違いは、DCTがアクセルを回すだけでその速度によりライダーが何もせずともバイク側が自動に変速してくれるのですが、E-Clutchはあくまで左手のクラッチレバー操作のみが不要なだけで、自ら左足でシフトペダルを操作してギアを上げ下げしないとギアが変わらないということです。なので、1速で発進して、そのまま左足でギアを上げなければずっと1速のままになります。

逆に2速とか3速とかで徐々にスピードを落としていきますと、ディスプレイのギアの数字のところに下向きの矢印が出て、ギアを落とすようにと表示されます。もちろんそのまま止まってもエンストはしません。

パッと思ったのが、スーパーカブの自動遠心クラッチです。スーパーカブもクラッチ操作なしで、左足でギアをカチャカチャと上げたり下げたりしますが、1速や2速で止まってもエンストはしません。まさにそんな感じ。それにプラスしてクラッチが使えるようになった感じです。

エンジンがかかってないとクラッチレバーはクラッチワイヤーが切れたかのようにダランとしていますが、エンジンをかけると通常のクラッチのようにピシッとなります。DCTのように、特にA/Mなどの切替スイッチはなく、そのまま1速に落としてもE-Clutchによりエンストはせず、アクセルを開けるとスルスルと走り出します。

そして回転が上がったところで左足でシフトペダルを上げて2速に。但し、ここで強く上げないと(クラッチレバーの操作があるバイクでもそうですが)ニュートラルに入って「おっとと!」となるのでご注意を。そしてそのままシフトペダルを上げるだけで、3速、4速と上がっていきますし、もちろんクラッチレバーを握ってギアを入れて(上げて)もOKです。ただ単にクラッチ操作の手間が増えるだけのことではありますが…

多分ではありますが、バイクの操作で結構難しいクラッチ操作を無くして初めてバイクに乗る方やビギナーでも、エンストせず、エンストなどにより立ちゴケを気にせずに気軽にバイクに乗りやすくするための装備なような気がします。自動に変速していくDCTが(構造的にも)ビッグバイクのスピード重視でないNC750Xやアフリカツイン、X-ADVなどのモデルに装着することで(2025年には新車購入平均年齢が約57歳と予想される)ライダーの高齢化の受け皿として開発された感じなのに対して、E-ClutchはCBR650R/CB650Rというスポーツテイストのバイクに装備されたことで、E-Clutchによるクラッチ操作レスで乗りやすくして、プラスしてクラッチを使ってクラッチ操作を覚えたりクラッチを使って走る楽しさを気軽に覚えてもらうために開発されて、よりバイクを乗りやすくして新たな(特に若い)ユーザーを増やすための装置かな…と思いました。なんといってもクラッチを繋ぎ間違えても絶対にエンストはしないのですから安心この上ないです。

逆に、スポーツバイクということでワインディングロードなどでのスポーツ走行をする場合、自動変速のDCTですと自分の思ったギアチェンジが出来づらく、スポーツ走行の爽快感がスポイルされることもありますが、特にベテランライダーなどクラッチ操作でスポーツライディングをより楽しむライダーにはクラッチは必須ですし、でも高速や市街地などクラッチ操作が負担となる場所ではクラッチレバー無しでギアペダルだけでシフトチェンジ出来るのは大変楽なので、クラッチを使ってのスポーツ走行を楽しみ、クラッチ操作なしにより疲労度を軽減させるという、クラッチ操作ありとなしとでのいいとこ取りを楽しめると思います。

但し、やはりE-Clutchも慣れが必要で、今回30分間ほどCBR650R E-Clutchに乗りましたが、やはり市街地ではとっさにクラッチレバーを握ってしまったり、ギアペダルだけの操作に慣れずにいまいちギクシャクした走りになってしまう場合もありました。

あと、クラッチ操作なしだと、Uターンや小回りする時に(エンストはしないと頭では分かっているですが)エンストするんじゃないかという怖さが体の奥底にあって、上手くバイクを傾けてられないという感じもありました。どうしても体がクラッチ操作に慣れてしまっているため、特に前傾姿勢でハンドルの切れ角が少ないスポーツバイクですと感覚的にクラッチレバーを握ってしまいがちです。そういう場合でもクラッチレバーが付いているというのは安心感があって良かったです。

そのほかの装備としては、前出のアシスト&スリッパー® クラッチやトルクコントロールなどの電子制御システムのほか、Bluetoothでスマートフォンとの連携してヘッドセットでの音声やスマホのナビや音楽アプリなどを操作できるHonda RoadSyncが装備されています。このHonda RoadSyncを操作するために夜間はLEDで光る4wayセレクトスイッチが左グリップの横についています。

5.0インチTFT フルカラー液晶メーターはシンプルで情報がわかりやすいのですが、燃料計も含めてかなりシンプルなので、もっとデザイン化されてもよかったかな…とも思いました。ディスプレシのデザインは、バー、サークル、シンプルの3タイプから選べて、背景色をホワイト、ブラック、自動から設定することができます。とはいえ、どのデザインもシンプルでした。

ちなみに、液晶の左側の緑色のランプが付いていないとE-Clutchは使用できません。イグニッションをONにしてから、ちょっとしてから点灯します。例えるなら液晶テレビのようです。そのほか、昨今のホンダ車に装備されるようになったエマージェンシーストップシグナルや盗難抑止機構の「H・I・S・S」なども装備されています。

しかし、かなり技術開発費や開発時間がかかったであろうこんな凄い装置を(DCTもそうですが)スタンダードモデルに対して僅か55,000円高(グランプリレッドカラーは88,000円高)という価格設定で販売するところが、まさにスーパーカブの自動遠心クラッチに通ずるホンダの自動クラッチ&オートマティックの信念たる感じで、昨今もハンターカブやレブル250、GB350などのヒットバイクを作り出してきたホンダのマーケティングから、自動クラッチ&オートマティックという流れが確実に来ている(来る)のだろうと感じました。そして、より多くの人々にバイクを楽しんでもらいたいという気持ちが、このような技術の開発と、価格設定に生きているのだと思います。しかし、昨今、バイクの価格が上がっている中で、E-Clutch付きで税込でCBR650Rが115.5万円〜とは安い!

個人的には、シフトペダル操作なしで自動変速してくれるDCTに(E-Clutchのように)スポーツ走行や山道などで使いたいクラッチが付いてくれたら嬉しいなあ…と思うのですが、ホンダのことですから、その技術も既に実験しているかもしれませんね。今後、より進化していくだろうホンダの自動クラッチ&オートマティックのアップデートが楽しみです。


全長/全幅/全高(mm):2,120/750/1,145 シート高:810mm 車重:211kg 水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒 648cm3 最高出力:70kW(95PS) / 12,000rpm 63N・m(6.04gf/m)/9,500rpm タンク容量:15L カラー:グランプリレッド[価格:1,155,000円]、マットバリスティックブラックメタリック[価格:1,188,000円]

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