サーキットでこそその真価を楽しめるバイク
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2020年の9月に発売された並列4気筒エンジンを搭載した249ccのフルカウルスポーツバイク。試乗しましたのは、SE KRT EDITIONになります。80年代には多くの車種が存在した250cc4気筒バイクですが、現在の国産バイクのラインナップではZX-25Rが唯一のバイクとなります。
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水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ249㎤のエンジンは15,500rpmで33kW(45PS)を発生。これは現行250ccクラスではもっとも高い出力になります。しかも、ラムエア加圧時には34kW(46PS)/15,500rpmを発生します。最大トルクは21N・m(2.1kgf・m)/13,000rpmです。
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タイヤサイズは、フロントが110/70R17M/C 54H、リアが150/60R17M/C 66Hとなり、ダンロップのラジアルタイヤ SPORTMAX GPR-300が装着されています。
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そしてSEにはアップとダウンの両方に対応しているオートブリッパー付きのカワサキクイックシフター、トラクションコントロール、ABSなどが標準装備されています。
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跨ってみますとシート高785mmで、且つシートの前の方が細くなっていることもあり、足付きはとても良いです。
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メーターはアナログの回転計の右側に速度計ほか、各種情報が表示されるデジタルメーター。そして、左側にはABSやETCの表示灯があります。またウィンカーの表示は右と左で分かれていて、250ccバイクながら質感のあるスポーティなコクピットです。
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ポジションですが、セパレートハンドルではありますが、80年代のクォーターバイクとは違ってハンドルの位置がやや高めで絞り角も深くないため、握りやすく操作しやすいです。それでももちろん前かがみのスポーティなポジションにはなりますが、思ったよりはきつくはありません。
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ただ、ミラーが結構横に張り出しているので、渋滞路などの走行では注意が必要かもしれません。
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タンクがスリムなこともあり、座った感じ威圧感がなく、シールドも低いこともあり視界は良いです。グリップ周りのスイッチ類もシンプルで走りに集中しやすいです。
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さて、エンジンをかけてみますと、腹下のマフラーエンドから250ccとは思えない低いエグゾーストノートを奏でます。さすが4気筒エンジンならでは、という感じです。久しぶりの250ccの4気筒エンジンの排気音に聞き入ってしまいました。
さて、早速走らせてみました。アイドリング時の2千回転から意外とイージーにスルスルと発進…と、3~4千回転でちょっとパワーが出ずにモワっとします、そんな感じが6千回転くらいまで続くものの、7千回転を越えてからスルスルと加速しだします。そして、1万回転を超えると、まさに水を得た魚のごとくパワフルになり、1万3千回転くらいからまさに超高音のエグゾーストノートとともに本領発揮の加速力を発揮します。そのまま、最高出力を発生する1万5,500回転までまさに4気筒ならではのスムーズさで元気よく回り、レッドゾーンの1万7千回転まで回り切ります。
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そうそう、昔、80年代に乗った4気筒250ccもそんな感じでした。但し、当時の250ccクォーターは、よく回って音はいいけど全然早くない…とも言われましたが、さすがは21世紀の技術が詰め込まれた250cc4気筒バイクは、確かに低中回転域ではそんな感じはあるものの、高回転域に入りますと、一気にスピードがのっていきます。
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ですので、やはり250ccの4気筒バイクであるこのZX-25Rで走りを楽しむためには、常に1万回転以上を保持している必要があり、公道よりはサーキットでこそその真価を楽しめるバイクと言えます。そのためのクイックシフター装備になるかと思います。
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もちろん、発進はしやすく、リヤシート下にUSB電源ソケットが装備(SEは標準装備)されていたり、オプションでETCの車載器を搭載できたりと日常使用やツーリングでも楽しめますが、やはり街中やツーリングなどで多用する低中回転域がモワッとしている分、高回転を使って街中で機敏に扱うには、結構シビアなアクセルワークを強いられることになるかもしれません。
もちろん、スポーツ走行がしやすいようにタンデムシートも別離の段差シートになっていて、中央部が盛り上がっていることもあり、積載性はいいとは言いづらいですが、逆に言うと、サーキットでスポーツ走行をするにはもってこいのバイクかと言えます。
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但し、一般公道のワインディングロードでは、ビッグバイクのように大きなトルクで余裕をもってグワッとコーナーリングするという感じではなく、250ccクォーターの軽い車体と1万回転以上の高回転域を使ってコーナーリングをする走りになるため(80年代は2ストを中心に峠道ではそんなライディングが多かったですが)、スポーツ走行をするリスクが高いことから、やはり安全なサーキットでの走行がおすすめです。
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カワサキ的にも、主マーケットでのインドネシアをはじめとした東南アジアでのNinja250に続くオピニオンとして発売した経緯もあるでしょうし、アジア選手権などを鑑みてのサーキット走行をメインとしたバイクという位置づけなのは間違いないでしょう。実際に、国内でもZX-25Rでのレースなどもはじめられています。それでこそ、クイックシフターやトラクションコントロールなどの装備がより活用できます。
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もちろん、公道を走り、ツーリングやワインディングでスポーツ走行を楽しむことは出来ますが、やはりZX-25Rの高回転の走りの真骨頂を楽しむにはサ-キットが一番。しかし、これだけの装備で4気筒のフルカウルバイクが84.7万円(Ninja ZX-25R)~で買えるというのは驚きですし、コストパフォーマンスも抜群です。車検の無い250ccということで維持費も安いので、フルカウルバイクに乗りたい若いライダーの方々、そして、久しぶりに250ccクォーターバイクに乗ってみたい熟年ライダー(の2台目バイク)にはもってこいのバイクかと思います。4気筒バイクで高回転を回し気味のため、250ccのツインバイクと比べますと燃費はよくないかもしれませんが、レギュラーガソリンなのはうれしいところです。
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今、250ccの主力となっていますスムーズで乗りやすい2気筒バイクや単気筒バイクとは違って、ZX-25Rを公道で満足して走らせるにはそれなりのテクニックや我慢が必要になってくるとは思いますが、逆に、ZX-25Rを操りきった時の達成感は他の250ccバイクでは味わえないものですし、80年代の2スト250ccバイクもそうでしたが、決して利便性だけでない、他車にない独自性を享受できることこそがバイクの楽しみでもあるとも言えます。何といいましても現行車での250ccでの4気筒バイクはこのZX-25Rしかないのですから、それらを楽しめるのは(現行車では)ZX-25Rオーナーのみの特権ということになります。80年代に250ccで楽しんでライダーの方にも、ある意味、現代版の懐古的な楽しみを享受できるバイクかもしれません。
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