乗りやすい買いやすいミドルアドベンチャーバイク
今回は新発売されましたトライアンフのタイガースポーツ 660を中心に(同じタイガーシリーズに850ccがありますため)600~900ccの120万円までのロード系のアドベンチャーバイクをセレクト。数値的に対比してみました。(※ヤマハ テネレ700はオフロード系のため、今回の対比からは外させて頂きました)。
まずは、先日発売されましたトライアンフ タイガースポーツ 660。 水冷240度並列 3 気筒 DOHC12 バルブ 660ccエンジンを搭載し、 最高出力 81 PS / 80 bhp (59.6 kW) @ 10,250 rpm を発生します。価格は1,125,000円
そして、トライアンフ タイガースポーツ 660に排気量が近い、スズキ Vストローム650/XT ABS。現在のモデルは2017に発売開始されたモデルで、水冷V型2気筒DOHC4バルブのエンジンを搭載して、69PS/51kW@8,800rpmを発生します。価格はキャストホイールのSTD(スタンダードタイプ)が924,000円、そしてスポークホイールのXTが968,000円です。
次が、排気量が100ccほどアップし、現行車が2016年に発売、2018年にマイナーチェンジしたホンダのNC750X。水冷OHC4バルブ直列2気筒750ccのエンジンを搭載して、58PS/43kW@6,750rpmを発生します。価格は、STDが924,000円で、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)仕様が990,000円です。
そして最後が、水冷並列2気筒894ccのBMW F900XRです。2020年の2月に発売。最高出力は105 hp/77kW @ 8,500 rpm で、価格は1,148,000円~になります。
さて、ロードタイプのタイヤを履いた600~900ccの120万円までの アドベンチャーバイク4種を選んでみました。排気量的には200cc以上、価格にしても20万円以上の差があります。また、BMWのF900XRはヤマハのトレーサー9 GTと同じ装備を付けますと、ほぼトレーサー9と同じような価格帯になるのですが、一応ベース車両の価格が114.8万円のため、セレクトさせて頂きました。ご了承ください。
なお、4車エンジンのタイプが各々違いますため、それが大きな違いの要因のひとつになると思います。
トライアンフ タイガースポーツ 660 | スズキ Vストローム650/XT ABS | NC750X | BMW F900XR | |
エンジン | 水冷240度並列 3 気筒 DOHC12 バルブ | 水冷V型2気筒DOHC4バルブ | 水冷OHC4バルブ直列2気筒 | 水冷並列2気筒 |
排気量 | 660cc | 645cc | 750cc | 894cc |
最大出力 | 81 PS / 80 bhp (59.6 kW) @ 10,250 rpm | 69PS/51kW@8,800rpm | 58PS/43kW@6,750rpm | 105 hp/77kW @ 8,500 rpm |
愛大トルク | 64 Nm @ 6,250 rpm | 61N・m[6.2kgf・m] / 6,500rpm | 69N・m[7.0kgf・m]/4,750rpm | 92 Nm / 6,500 rpm |
全長(mm) | 2071 | 2275 | 2210 | 2150 |
全幅 (mm) | 834 | 835 (XT:910) | 845 | 860 |
全高 (mm) | 1398/1315 (スクリーン高/低) | 1405 | 1330 | 1320-1420 |
車両重量(kg) | 206 | 215 | 214(DCT: 224) | 223 |
ホイールベース (mm) | 1418 | 1560 | 1525( DCT:1535) | 1530 |
最低地上高 (mm) | ー | 170 | 140 | ー |
シート高 (mm) | 835 | 835 | 800 | 825 mm (OEサスペンションローアリングキット: 775 mm、OEローシート: 795 mm、OAハイシート: 840 mm、OAコンフォートシート: 845 mm、OAエクストラハイシート: 870 mm) |
タイヤサイズ(前) | 120/70 ZR 17 (58W) | 110/80R19 M/C 59V | 120/70ZR17M/C(58W) | 120/70 ZR 17 |
タイヤサイズ(後) | 180/55 ZR 17 (73W) | 150/70R17 69H(XT-69V) | 160/60ZR17M/C(69W) | 180/55 ZR 17 |
燃料タンク容量 (L) | 17.2 | 20.0 | 14.0 | 15.5 |
燃費 | 22.22km/L | (WMTC)24.2 km/L | (WMTC)28.6 km/L | ー |
燃料種類 | 無鉛プレミアムガソリン | 無鉛レギュラーガソリン | 無鉛レギュラーガソリン | 無鉛プレミアムガソリン |
価格(税込) | 1,125,000円 | 924,000円 XT:968,000円(税抜) | 924,000円 DCT:990,000円 | 1,148,000円~ |
メーター | TFT | デジタル(モノクロ)/アナログ併用 | デジタル(モノクロ) | 6.5インTFTカラーディスプレイ |
システム | スリップアシストクラッチ 2ライディングモード ライドバイワイヤスロットル トラクションコントロール | トラクションコントロール(2モード/off) ローRPMアシスト スズキイージースタートシステム | アシスト&スリッパー®クラッチ(MT仕様) スロットルバイワイヤシステム 4ライディングモード エマージェンシーストップシグナル | ー |
装備 | ー | リアキャリア アンダーカウル 12VDCソケット | 23Lラゲッジボックス 盗難抑止機構 H・I・S・S ETC2.0車載器 グリップヒーター | グリップ・ヒーター ETC |
まずは、 スズキ Vストローム650/XT ABS ですが、 水冷V型2気筒DOHC4バルブ を搭載して、排気量は4車の中では一番小さい645ccになります。ビッギバイクのVツインながら、響くような鼓動感やパルス感はないものの、回していきますとVツインらしいドコドコ感を感じることが出来ます。出力は69PSを発生。4車中唯一のフロント19インチで、フロント110、リア150ということで、タイヤが他3車よりも細めのこともあり、また、地上最低高が170mmで、STDはキャストホイールながら、XTはスポークホイールでマフラーのエキパイなどを保護するアンダーカウルも付いていることからオフロードでの走りも視野に入れた作りになっています。
電子制御系はトラクションコントロールのみですが、アルミ製の大型リアキャリアや 12VDCソケットが付いていて、特に長距離走行やキャンプツーリングなどでの実用性は抜群です。また、回転数が落ちてもエンストしづらい ローRPMアシスト やワンプッシュで始動が可能なスズキイージースタートシステムが付いているので、安心感も高いです。
但し、ネック的な部分としましては、 ホイールベースが1560mmと4車中一番長いことからも、車格が大き目でフロント周りが大きいので、取り回し自体はそんなに難しくはないのですが、他の3種よりは大柄な車格のためUターンや押し引きがやや大変かもしれません。また、シート高は 835mmながら、シートが肉厚で幅広のため、(タイガーにはまだ乗れていませんが)、NCやF900XRに比べて足付きがきつかったように思います。しかし、逆に言いますと大柄な車格で防風性も高いですので、高速走行はとても楽で、肉厚幅広のシートなので長い距離を走っても疲れ辛いというメリットがあります。
次は、ホンダのNC750Xです。
『New Mid Concept』(ニューミッドコンセプト)として、2011年に、NC700S、NC700X、インテグラの3機種が姉妹車として、同じエンジン、そして、フレーム構造を一部共有し、コストダウンをはかり、リーズナブルなプライスで発売されました。ちなみに、東寺のNC700XのSTDは649,950円、DCTが752,850円でした。エンジン回転は6,000rpm以下を常用という市場調査により作られました直列2気筒エンジンは低中型のエンジンで、今でもそのコンセプトは継承されています。ですので、NC750Xも 6,750回転で58馬力、そして最大トルクも4,750回転で発生と、他の3車と比べ、かなりの低中回転型になっています。SOHCエンジンということもあり、スロットルを回して飛ばすバイクではなく、ギアをこまめにアップして低中速を使って走るスタイルのバイクです。
そんなNC750Xですが、やはり注目は DCT(デュアルクラッチトランスミッション) で、クラッチを使ってのギアチェンジはないのですが、スクーターのように無段階変速ではなく、カチャカチャと回転数に合わせてバイクが自動にシフトアップ、シフトダウンを行ってくれるセミオートマチックトランスミッションです。せすので、バイクらしいギアチェンジにより加速やgを楽しみながら、自らクラッチやギアチェンジをしなくてすむという楽さを両立しています。装備も4つのライディングモードに、ETC、グリップヒーターと100万円以下のモデルながらかなり充実。しかも、タンクの場所に 23Lものラゲッジボックスがあります。
そんなNC750Xですが、ネガな部分としては、高速などではDCTはとても楽で有益なのですが、タイトコーナーなどを走りますと、自分の意図するタイミングと違ってギアチェンジをしてしまうことがあるため、酷道走行やワインディングでの スポーツ走行は少し苦手な感じがするところと、STDも共通ですが、タンク位置の部分が長めな感じがしてバイクを楽し込みづらいところと、給油口がリアシートの下にあるため、リアシートバッグを付けていますと、給油時毎にバッグを取らなければならないという手間がかかります。とはいえ、DCT仕様車に関していえば、4車中、一番楽にライディングが出来るバイクに違いありません。
その次が、BMWのF900XRです。え、BMWのビッグバイクが110万円台!と驚かれるかもしれませんが、からにコスパのよいBMWの戦略モデルです。排気量も894ccということで、馬力にしろトルクにしろ他の3車とは頭一つ抜け出ています。シート高も825mmと、低くはないにしろ外車としては乗りやすく、そして、ベース車両でもETCやグリップヒーターが付いているという豪華さ。走りも、とにかくパワフルで、ショートスクリーンながら体を伏めにして走ると、結構風が当たらず流れて行きます。そんなポジションからして、BMWではアドベンチャーラインに属していますが。このバイクはアドベンチャーバイクというよりは、スズキのGSX-S1000FやカワサキNinaj1000のように、ハーフカウルのついたスポーツバイク…といったカテゴリーになると思います。
ですので、まったり走るのは増えて…という訳ではないのですが、バイク特性から鑑みるとある程度の速度域で走らないとつまらないです。あと、BMWのバイクは総じてですが、114.8万円というのはベースモデルの価格で、これにいろいろオプションを付けていくと結構なお値段になってしまいます。例えば、電子装備のクルーズコントロールやDTC、そして、ローシートなどがあるスタンダードモデルですと1,379,000円、ダイナミックESAやセンタースタンドも付いたプレミアムラインですと1,413,000円になります。また、純正部品の輸入品ということで、外国車は国産車に比べて部品交換などの維持費がかかります。
そんな中で、このトライアンフ タイガースポーツ660は、他車が2気筒の中での3気筒で、よりパワフルな走りを楽しめます。スポーツという名が付いていることから、テイスト的には BMW F900XR のような感じで、先行して発売された同エンジンのトライアンフ トライデント660のハーフカウル付きモデルと考えた方が良いかもしれません。とはいえ、他3車と比べて一回りサイズが小さく、重量も軽く、そしてホイールベースが 1418mmということで、トライデント660と同様に小回りが利きそうであり、取り回しがしやすそうなモデルで、これは狭路などを走るツーリング的には、軽くて取り回しがしやすいことは有益です。 そして、STDで既にトラコンやライディングモード、 スリップアシストクラッチなどの電子装備が付いているのは嬉しいところです。
但し、これもBMWと同じですが、オプションでUSB、グリップヒーター、ハンドガードなどを付けますと、各々2万、3万とトータルプライスばアップしていくのと、やはり電話や音楽、GoProとTFTパネルが連動するTFTコネクティビティシステム(47,388円)には入っておきたいとこrですが、まだ同システムが完全に日本語版として機能していないのがネックなところです。
今回、独断で各メーカーのミドルアドベンチャーバイクを数字的に比較してみましたが、タイガースポーツ660以外は試乗をさせて頂いたことがある中で、各車のイメージですが、高速を使いつつも3桁国道や県道などを走る長距離ツーリング、もしくはキャンプツーリングには スズキ Vストローム650XT。DCTでギアチャンジなしで楽に高速を走行し、荷物はタンク位置のラゲッジスペースにポンと入れて、飛ばさず、地方の道の駅やグルメなどを食べにのんびりとお気楽ツーリングをするならホンダNC750X DCT。高速を飛ばして、そしてワインディングを走って汗をかいた後にひとっ風呂浴びて、そしてまた、バッとワインディングロードを走って帰るのがBMW F900XR。トライアンフ タイガースポーツ660 は、まだ乗らせて頂いていませんが、そのコンパクトさと3気筒エンジンのパワフルさから、高速を飛ばして、ドライブウェイやスカイラインを走って高台の展望台から好眺望を望むようなツーリングに適している…そんなイメージです。皆さんのイメージはどうでしょうか。ミドルアドベンチャーバイクのご購入をご検討されている方の一助にでもなりましたら幸いです。
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