◾️2024年式 BMW F900Rに乗ってみました。

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気が向いたら、構えずにパッと乗って出かけられるBMW

江月水仙ロードにて

先日ツーリングで乗りましたBMWのF900R。いやー、楽しいバイクでした。華美な装備を外して110万円台とリーズナブルな価格設定をした、ある意味BMWの戦略バイク。よくこのようなバイクをシンプルイズベストって、うどんでいうと素うどん…というふうに例えられることが多いのですが、F900Rは素うどんではなく釜揚げうどんって感じでしょうか。見た目は派手さは無いのですが、単なるシンプルなだけのバイクではなく、乗ると実は個性的な味わいがあるバイクです。

一番良く感じたのがそのエンジン音です。クヮーンという直列4気筒や、ドドドドといった単気筒の音とはまた違う、並列2気筒エンジン独特のドロドロドロという重低音で、まるで映画で聞く零戦のエンジン音のように聞こえます。調べてみましたら零戦のエンジンは空冷複列ということで、なるほどなといった感じです。トンネルに入ると聞き入ってしまいたくなるくらいでした。

続いてそのエンジンパワーで、最高出力は77 kW (105 PS) / 8,500 rpmで、凄いというほどのパワーではないのですが、並列ツインらしい最大トルクが92 Nm / 6,500 rpmというトルクフルなエンジンで、引っ張られるというよりは押し出される様な感じで、気がつくとかなりのスピードが出ていてビックリします。

それほどに、スムーズに、そして体が持っていかれる様な唐突な加速力ではなく、スルスルスルとスピードがのっていくような感じです。常用域は3.5千回転から5千回くらいで、レッドは9.2千回転くらいですが、8千回転を過ぎたあたりから苦しくなってきます。そしてその辺りでディスプレイ上部にある回転オーバー(回しすぎ)の警告灯が点滅します。しかも、さすがBMWという感じでスピードの乗り方が早くて、あっという間にかなりの高速域に入ってしまいます。

それからBMWらしく足回りがカッチリしているので、その厚い低速トルクを活かしてワインディングロードを走るのが楽しいです。逆に、段差カーブなどでは道のギャップを拾いがちで若干突き上げらるような感じがしました。足回りがカッチリしていて高速域でも不安感なく走れるのは、やはりアウトバーンがある欧州車らしいところ。

シート高は815mmながら、跨るとサスがかなり沈むのかシート形状からなのか、数値以上に足つきは良かったです。感覚的には800mmくらいな感じがしました。

タイヤはスポーツ系のブリヂストンのS21を装着。サスもそうですが、タイヤもカッチリとした接地感でした。リアにはタンデムグリップを装備し、タンデムシートの広さからこの手のバイクとしてはタンデムがしやすそうです。ただ、タンデムグリップの形状とシートから離れたリアフェンダー的にベルトを引っ掛ける部分も含めて、積載性は少々難ありな感じがしました。

タンク容量は約13Lで少々タンク幅がありますが、特に威圧感もなく、走っているうちに慣れてきます。燃費は19km/Lくらいで、満タンで247kmなので、長距離ツーリング時には少々物足りないかもしれません。ただ、もう少し丁寧に走れば、確実に20km/Lはいくと思います。

シート下はぎっしりで、物を入れる余裕はないですが、標準でETC2.0が装備されていて、その車載器が入っています。ですので、ETCカードの出し入れはしやすいです。

ポジションはほぼ横一色から若干垂れ角が付いたハンドルでほんの少し前屈みになり、やはりワインディングロードなどでスポーツ走行をするのに適したポジショニングになります。

スポーツライディングを楽しむといったところでは、コーナリング中の急制動も安全にアシストしてくれるABS ProやシフトチェンジをサポートしてくれるギアシフトアシスタントPro、加速時のトラクションを最適化して走りをサポートするDTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)など、まさに一般路(もちろんサーキットでも)でのスポーツ走行をサポートしてくれる電子制御システムが標準装備されています。

そのほかに、Bluetoothでスマホと繋ぐと、音楽や通話などの機能がディスプレイに表示されるコネクティングシステムを標準装備。

そのほか、グリップヒーター、ライディングモードも標準で装備しています。110万円台のBMWでここまで装備が重質しているもは驚きです。操作は、マニュアルを見なくても左グリップの根本にあるMENUボタンとクルクル回るダイヤルで試しているうちになんとなしに分かってきます。

さて、以前にトライアンフのストリートツインのところでも書かせて頂きましたが、特に敷居も価格も高い輸入車で、ライトユーザーがそのブランド(メーカー)に入りやすくするため、そして、どうしても常顧客になりがちなところで新たなユーザーを獲得するために、同メーカーに入りやすい価格を抑制した価格戦略車を設定することがあります。過去でいいますと88.3万円で販売されましたハーレーダビッドソンのスポーツスター883や、100万円以下で販売されていましたドゥカティのモンスターなど。もちろん、各メーカーさんはそのようなことを明確にうたってはいませんが、それによって各メーカーに多くの(そのメーカーに乗る)ライダーが増えました。

昨今、ハーレーもドゥカティもブランドを向上させて、高付加価値、高価格で販売する4輪輸入車のようなブランディング戦略になっていますが、やはり最近は円安もあり、リーズナブルで国産バイクと並べて比較検討が可能な価格戦略車による需要増(登録台数増)を設定するのは難しくなっています。しかも、各社は販売台数が少なくて頭打ちしている日本よりも、販売台数が桁違いに多い東南アジアやインドに向けて中排気量のバイクを新たに設定して活路を見出そうとしています。

それでも、トライアンフなんかはストリートツインやトライデントなど他輸入車に比べますとリーズナブルなプライスに設定して販売台数を増やしています。もちろん、これはディーラー網を増やすために(ディーラーさんに対しての収益化できるビジネスモデルを提示するため)の戦略的に台数増をバックアップ(本国の意向)する意味もあります。

BMWのこのF900Rがそのよう意味での車両かは実際には分かりかねますが、それでもパニアやキーレスなどに付加価値装備を無くして、この円安の中、900ccで110万円台と、国産車でいうところのヤマハのMT-09(125.4万円)やカワサキのZ900(127.6万円)より安い価格設定は、3気筒や4気筒ではなくて2気筒ということもありますが、そのパフォーマンスとBMWという所有感から鑑みますと、十分に比較検討として国産車と共に購入検討ができるプライスになっています。

BMWといえば、車は1000万円とか2000万円もしますし、バイクでも主要プライスゾーンは200〜350万円という高額ゾーン。その中で、グリップヒーター、ETC2.0車載器、トラクション・コントロール、エンジンブレーキ コントロール、コネクティングシステムなどを標準装備して、BMWのビッグバイクが119万円〜で買えるというのはかなりのお買い得かと思います。ことツーリングを考えれば、カウル付きでスクリーンのあるF900XR(151.3万円〜)の方が楽ですが、その価格差は32.3万円もあります。

たぶん、二輪、車を通してBMWのエンブレムが付いたキーを最安で持てるのはこのF900Rかもしれません(310のキーは刻印になります)。もちろん、BMWに乗るという所有感も満喫できます。ただ、F900R自体のキャラが薄いというのが難点。どうしてもBMWというと1300を筆頭にGS系のアドベンチャーバイクやBMWの代名詞でもありますフラットツインエンジン、もしくはS1000RRなどのスポーツバイクなどキャラが強いバイクが多い(売れている)こともあり、パッと見、ストリートバイク的なF900Rは、その魅力が分かりづらいところがあります。

とはいえ、逆にGSやS1000RRなどはその車格やパワーからどうしても気軽には乗りづらい部分はありますが、F900Rは良い意味で、BMW車としては構えずに乗れるのがいい!です。ちょっとした街乗りや、それこそ通勤・通学、そしてツーリングからワインディングでのスポーツ走行まで、気が向いたらパッと乗って出かけられるキャラクター感がとてもいいバイクです。

とはいえ、このバイクの本領を楽しむのはワインディングでのスポーツ走行かと思います。一度、試乗をしてみてワインディングロードを走ってみられたら、その良さがすぐに感じられるバイクだと思います。個人的には(設定がないのが残念ですが)、ツーリング走行に使えるスクリーンとハンドルガードをオプションで付けられたら、購入したいバイクのリストに入れたい一台です。

BMW F900R

全長/全幅/全高(mm):2,140/815/1,135 シート高:815mm 車重:215kg 水冷並列2気筒4ストローク 894cc 最高出力:77 kW (105 PS) / 8,500 rpm 最大トルク:92 Nm / 6,500 rpm タンク容量:13L レーシング・レッド、ブラック・ストーム・メタリック2 (N2U) スタイルトリプルブラック(+28,000円)、ライト・ホワイト (N4B) スタイルスポーツ(+36,000円) 価格:1,190,000円〜 ※ツーリング使用時の平均燃費:約19.0km/L

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