冬でも走って楽しい場所
房総半島の突端には海の神々が住む竜宮から奉納された石があり、三浦半島にあるもう一つの石と阿吽で結界を作り東京湾を守っていると伝わります。強風恐怖症である僕は、東京湾アクアラインを今年も無事渡れるようにと神の石にお願いをしに、軟風が吹く南房総の地へと旅に出かけました。
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紺色の闇の中、煌々と光る羽田空港の駐車場のネオン管を眺め見ながら、首都高速湾岸線を走りました。風は弱いので、これならアクアブリッジ渡橋は大丈夫かな…と思いつつバイクを走らせました。
やがて多摩川トンネルへと入り、木更津という文字に従い左車線に入ります。地上に出てヘアピンカーブを抜けると、全長9.5kmの東京湾アクアトンネルの入口が見えてきました。本線に合流しトンネル内に入ると照明に照らされた車線が遥か彼方まで続き、一般国道では日本一低い最深部60mまで下降します。そして再び上がり、やがて遠くにポツンとトンネルの出口が見えてきました。
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海ほたるPAに向かう左車線には入らないで、そのままアクアブリッジに向かうため真っ直ぐに進みます。緊張の一瞬です…トンネルを抜けた瞬間、ブワッと強い風にバイクが振られました。
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ま、まずい、風が強い。
やはり京葉道路で行くんだった、と強風恐怖症の僕は後悔するも後の祭り。体を伏せて横風に耐えて走るも、風に振られてバイクが蛇行します。橋上の吹流しが真横になっているのを見て風速が10m以上あることを確認しつつも、橋上から垣間見える朝焼けに目を向ける余裕もなく、そのまま約4.4kmの日本一の橋梁を走行し、やっと房総半島に上陸しました。
「ふーっ」と、大きな安堵のため息をついて、やっと肩の力が抜けました。そして、料金所を過ぎてそのまま走り、木更津JCTへと向かいました。
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東京湾アクアラインを利用すれば都心から30分ほどで行ける房総半島は、日本で紀伊半島、渡島半島に次いで三番目に大きい半島で、もちろん三浦半島や伊豆半島よりも大きいです。そして、房総半島がそのほとんどを占める千葉県も和歌山県や福岡県よりも広く、東京都や神奈川県の倍以上の面積があることを考えますと、房総半島がどれほど大きいかがうかがえます。
但し、千葉県の最高峰は408mの愛宕山で、沖縄県を含めて全都道府県中で一番低い標高なので、半島全体が小高い丘陵のようで爽快な山岳路や雄大な景観地は少ないですが、素掘りのトンネルや川の流れを変えるための川廻しなど、房総独特の生活の中にある風景を見る事が出来ます。
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中でも南房総は、南から黒潮海流が流れていることから温暖で冬でも走りやすい人気のツーリングエリアです。
穏やかな内房と荒々しい外房の雰囲気の違う海の両景観を見られて、沿道を菜の花が咲き誇る房総フラワーラインや海の景観を満喫しながら走れる千倉のシーサイドロード、そしてアジやクジラといった地物房州グルメを食せる道の駅や食事処が点在していて、目も舌も満喫出来る場所です。
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さて、木更津JCTで館山自動車道に入り、鋸山の石切り場跡などを眺め見つつ40分ほど走りますと、終点の富浦ICに到着。この自動車道が出来たお陰で遠かった南房総が近くなり、とてもアクセスしやすくなりました。そして、ここから安房グリーンラインへと向かいました。
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安房グリーンライン~南房総市の千代から白浜までの約16kmを繋ぐ安房グリーンライン。ちょっぴりワインディングロードながら、南房総では希少な“走れる”道です。
南房総市千代から始まる広域農道の安房グリーンラインは、最初は田園の中を走る直線路ながら、少し分かり辛い所にある内房線の城山踏切を超えてからの白浜町までの約12kmの区間は、丘陵内を走るRの浅いのカーブが連続する追い抜き可の二車線路で、景観こそ望みづらいですが車通りも少なく、走りを楽しめる南総随一のワインディングロードです。
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丘陵間を抜ける風も心地よく、気持ちよく走れます。そしてトンネルを抜け房総フラワーラインに突き当たり、海沿いの道を千倉へと向けて進みました。
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南房総の走りの楽しいところは、道が海からとても近くて海に近い目線で走れるところです。特に千倉から洲崎にかけての海沿いの道は岩礁や砂浜などを間近に見ながら走ることが出来る国内でも有数のシーニアロードです。冬場でも暖流の黒潮のお陰でやや温かい海風が心地よく吹き抜けていく。まさに、今回探していた風です…。
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千倉漁港に着き小休止した後、再び来た海沿いの道を戻り、漁船が展示されている道の駅ちくら潮風王国で食事を取りました。中央に大きな生簀があり、地物の土産や揚げ物の定食などを食せます。
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再び国道410号線に入り、野島崎、根本海水浴場などを走り見て、再びフラワーラインに入り洲崎へと向かいました。この辺りが沿道に花が咲き誇る区間で、1~3月は菜の花が見頃です。なお、平砂浦の沿いの場所では砂浜越しに海原を垣間見ることができますが、風が強く、日によっては道に砂が吹き出たり砂塵が舞う事か多いので、走行には注意が必要です。
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房総フラワーライン~館山市から南房総市和田町に至る約46kmの海岸沿いの道の総称。特に平砂裏沿い辺りの約6kmの区間では1~3月には菜の花(下画像)が、夏にはマリーゴールドが沿道を彩ります。
しかし、やはり海沿いの道はテンションが上がります。小さな港も点在しているので立ち寄って見るのも楽しいです。
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そして、是非立ち寄りたいのが洲崎神社と洲崎漁港です。特に漁港のそばにある浜の鳥居の中からは、好天ならば海越しの富士山が見え、また、近くの御神石は竜宮から奉納された石のひとつと言われ、対岸の三浦半島にあるもうひとつの石と共に東京湾を守っていると伝わっています。強風恐怖症の僕は、今年も無事にアクアブリッジを渡れるようにと祈願をしました。
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その後、洲崎から館山城に立ち寄り内房へと入りました。近辺には原岡の桟橋や船虫岩、岩井袋などの名所もあり、好天なら赤く染まった東京湾越しに富士山の遠望が見えるので、夕方から日没時の来訪がお勧めです。
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さてと、それでは祈願はしたものの、帰りはのんびりと強風のない京葉道路で帰るとしますか…。
南房総の立ち寄りお勧めの景勝地
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野島崎灯台(野島崎)~日本初の洋式灯台の一つの白亜の野島埼灯台(300円)。関東最南端の野島崎からは好景観も。無料Pあり。
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白浜の屏風岩~洗濯板状の奇岩が屏風のように連なる奇勝地。根本海岸から西に徒歩で約800m。
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安房白浜港灯台~岩礁の上にポツンと建つ塔高9.5mの白亜の灯台。海岸脇の未舗装路を走ればバイクでも近くに行けます。
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洲埼灯台~洲崎にある小さな灯台で、奥にはキャンプ場もあります。
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浜の鳥居~鳥居越しに富士山が見える事で有名になった洲崎神社の浜の鳥居。御神石の近くです。
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崖観音~船形山の中腹にある朱塗りの観音様。急な階段を登るが舞台からの眺めはいいです。Pあり。
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雀島と船虫島~内房の穴場スポットの法華崎遊歩道から見えます。特に夕暮れ時は景観が素晴らしいです。
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岡本桟橋~原岡海岸にある木製の桟橋。富士山の撮影スポットでもあり多くの人が来訪します。
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岩井袋~深く切り込んだ入江が美しい景観地です。素朴な好景観スポットです。
[ツーリングルート(例]上野IC[6:00]~東京湾アクアライン~(90km:1時間30分)ハイウェイアオシズ富楽里[7:30]~(26km:40分)白浜の屏風岩[8:30]~根本港~(6km:15分)~野島崎[10:00]~めがね橋~(10km:15分)安房白浜港灯台[11:00]~(6km:10分)千倉漁港[11:30] →(4km:10分)道の駅ちくら潮風王国[11:40]※昼食~(24km:30分)洲崎神社[13:00]~洲崎漁港(御神石、浜の鳥居)~(1.5km:5分)洲崎灯台[13:40]~(10km:15分)城山公園(館山城)[14:20]~(8km:15分)ビンガバーガー[15:00]~(7km:15分)崖観音[15:50]→(2.5km:5分)原岡海岸 岡本桟橋[16:20]~(2.5km:5分)法華崎遊歩道(船虫島)[16:50]~鋸南富浦IC~(100km:2時間)~錦糸町IC[[19:10] ※総距離:約298km(総使用時間:13時間10分) ※当ツーリングコースは一例です。交通事情等により、時間・距離等は変更となります。
[総費用(例):9,303円]上野IC~富浦IC 2,930円 コーヒー代 200円(ハイウェイオアシス富楽里) ねとら丼1,980 円(道の駅ちくら) 鋸南冨山IC~錦糸町IC 2,660円 ガソリン代 1,533円 (平均燃費:25.3km/L:ハイオク)※ETCあり。
※ライダー着用ウェア:elf EL-8244(フラッグシップ)ヘルメット:Arai VZ-Ram Plus(アライヘルメット)、シートバッグ:Moto Fizzミニフィールドシートバッグ(タナックス)、ボトムス:OXFORDアーマライトジーンズ(LINKS)、シューズ:Gベクターライディングシューズ(ゴールドウィン)
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