軽やかな398cc単気筒のスポーティバイク
既にBMWやKTMなどは、400cc以下のバイクを日本市場で展開していますが、いよいよハーレーに続き、トライアンフも日本の免許制度で言うところの普通二輪免許(400cc以下まで乗れる免許。401cc以上は大型二輪免許になります)で乗れる400cc以下(398cc)のバイクをリリースいたしました。
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もちろん、これは原付を含めて年間約40万台というミニマムな日本マーケットを狙って作られたわけではなく、年間販売台数が1,600万台というインドや約500万台というインドネシアほか東南アジアに向けて、今まで欧米マーケットに向けて大型バイクを生産してきた海外の二輪メーカーが、(今後の成長を賭けて)こぞって中型排気量のバイクを投入してきたのがその背景です。
インドのメーカーのロイヤルエンフィールドの主力バイクが350ccであることからも分かりますように、インドや東南アジアではまだまだ生活用のアンダーボーンなどのバイクがメインではあるのですが、所得が高くなり趣味のバイクも増えており、とはいえ1000ccを超えるようなビッグバイクはまだまだ高嶺の花(&まだ道路などのインフラが整っていない)ということもあり、250〜350ccくらいのバイクの需要が増えているというのに合わせて、各メーカーがコストパフォーマンスにも優れている同排気量のバイクをインドや東南アジアの諸国に投入(同諸国で生産して販売)しています。日本メーカーでも、ホンダのGB350やヤマハのMT-3、スズキVストローム250SX、カワサキZX25Rなどが同諸国向けに生産されて、そこから日本に入ってきています。
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さて、今回乗りましたトライアンフのSPEED400ですが、水冷単気筒DOHC4バルブ398ccのエンジンを搭載し、8,000回転で40PS(29kW)を発生。最大トルクは6,500回転で38Nmを発生します。
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外観では、同社のトライデント660のように、タンクにトライアンフのマークが大きくプリントされていて、一目でトライアンフだと分かります。スタイリングはオーソドックスなネイキッドスタイルですが、ゴールドの倒立式サスペンションを採用していて、スポーティさを醸し出しています。雰囲気的にはトライデント660の弟分のような感じです。
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そして、何より特徴的なのがバーハンドミラーで、らしさを感じられます。メーターはアナログメーターにデジタル計がついたデュアルメーターで、昨今のデジタルメーターのみのパネルに慣れていますと、かえって新鮮な感じがします。
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さて、跨ってみますと、シート高が790mmということもあり、また、サスも沈むので、かなり足つきが良いです。この辺りは、シート高が835mmあるスクランブラー400Xと一番異なる点です。車体も軽くて(171kg)取り回しも楽です。全長は2055mmありますが、単気筒エンジンということもあり、かなりコンパクトな車両のような感じがします。
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さて、実際にエンジンを始動させてみますと、単気筒ということでトトトト…という軽やかなエンジン音を奏でます。単気筒400ccですが、ヤマハのSRやホンダのGB350のようなパルス感は薄く、テイストよりスポーティ感を感じました。
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さて、早速に発進させてみますと、エンジンは軽やかに吹け上がっていきました。但し、すぐに8,000回転くらいまで吹け上がると頭打ちになりますので、ガーっと回してギアチェンジ、ガーっと回してギアチェンジといった感じでの走り方になりました。とはいえ、低速でも軽やかに走りやすいですので、市街地であれば回して走らなくても十分です。また、トルクアシストクラッチやライドバイワイヤースロットルの採用で、アクセルやスロットルも軽やかに操作ができます。
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もちろん単気筒400ccということで、絶対的な加速や速度は高くはないのですが、とにかく操作もエンジン出力もなんでも軽やかなので、街中を走っていてもストレスが溜まることなく気軽に走ることができます。また、ギアを上げてスピードをのせていきますと結構な速度域にまですぐに到達することができます。サスペンションも若干固めながら粘りがあって、まさにスポーツ系のバイクだなという感じでした。
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難点としては軽く吹け上がるのですが、最大出力を8,000回転で発生させるので、グワーっとアクセルを回してパワーを出すのですが、その8,000回転で吹け上がりが頭打ちになりますので、スポーツ走行をするには、結構、頭打ちになるギリギリのところでギアチェンジをしていくというせわしい感じになりがちなのと、単気筒ということで、以前の国産バイクで多くあった4気筒400ccとは違って重厚感や心地よいエギゾースト音が薄いというところでしょうか。まあ、単気筒ということで致し方ないところ。逆に、その軽さと引っ張るエンジンの特性を活かして、機敏な走りを楽しめます。
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あと、アナログの速度メーターがスポーティ感を醸し出していますが、ギアポジションの横にタコメーター(0 2 4 6 8 10 12という表示のところ)があり、これがエンジンを回すとすぐに8(千回転)のところまでになりレブルトメーターが点滅?するので、見づらいというか、ほとんど見ることがないのですが、表示が上下、点滅と目まぐるしくてちょっとうるさく感じます。個人的にはスピードメーターをデジタルにして、アナログメーターをタコメーがーにした方が面白かったのでは、とも思いました。
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ですので、このバイクはSRやGBなどの単気筒でパルス感を味わいながらドドドドと走るバイクとは違い、単気筒ながら、4気筒400ccバイクのようにエンジンを回してスポーティに走るバイクな感じです。但し、4気筒のそれと違って単気筒なので、エンジン音、及び車体も軽やかです。その点から、とても乗りやすいバイクですので、これからバイクに乗ろうという方や、久しぶりにバイクに乗られるというライダーには特におすすめのバイクです。一体シートでタンデムグリップもついてますので、タンデムもしやすいのも嬉しいところ。トライアンフというブランドの所有感も得られます。
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ちなみに生産はインドで行われていること(ちなみに、ハーレーのX350は中国生産になります)や、グローバル的な戦略車ということもあり、円安ながら価格が60万円台(69.9万円)というのも嬉しいところです。但し、決してチープな部分はなく、オンオフ切替式のトラクションコントロールやABS、USB-C充電ソケット、盗難防止用イモビライザーなどの装備が付き、オールLEDライトでセキュリティチップ内蔵のイグニッションキーなど、1台売ってどれだけ利益が出るの?と心配になるくらいの充実さです。
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オプションでウィンドスクリーン(14,520円)やヘッドライトグリル(14,520円)などもありますので、トラディッショナル風にしたりツーリング仕様にしたり、自分のバイクライフスタイルに合わせてカスタマイズするのも楽しいかと思います。
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