クリスマス・ナイト

真っ白な息が綿飴のようにフワフワと宙に漂い、凍てついた大気に覆われたモノトーンの街が、せっかちな夕闇に追われるようにして真っ赤に染まり出し始め、これから始まる長いナイトショーのエントランスがようやく開かれます。

やがて、待ちわびていたかのように、辺りには煌々とネオンが灯り出し、イルミネーションで飾られた街は、恒常的な日常という牢から解き放たれ開放感で満ちた人々で溢れ出します。

…さあ、バイクに乗って出かけてみませんか?


夜の街は、まるでファンタジーランドのごとく、陽のある刻とはまた違った色とりどりで様々な表情を僕達に見せてくれます。そして、今宵そこへと案内してくれるファンタジスタはビューエルXB9S

彼は、まるで氷上のアイススケーターのようにエッジを活かしながら、クルクルと軽くて曲がりやすい車体を利用して、渋滞している車が創り出す赤い河を、まるでクロコダイルをよそ目にミシシッピーリバーを渡るカヌーのごとくスイスイと身軽に下っていきます。

また、ある時は、インディアンと闘う勇敢なバッファローのごとく雄々しく息を荒げながら、灰色の大地をガツーンと蹴り上げ、空を跳ぶようにまたたく間に次なる街へと運んでくれます。

そんなパワフルでナイスガイな彼の纏うスタイルは、スケルトンのボディにナックルガード、そしてUSエアフォースの名機ファントム爆撃機を彷彿させるがごとく車体の真下にドンと取り付けられたマフラーと、まさにクールで独特な外見を持ち街中の注目度は抜群!街行く人の視線を浴びながらイルミネーションの中を走り抜けるその姿は、まるで縦横無尽に街中を縫うストリートパフォーマーのようでもあります。

そして、その最大の特徴である怒涛のトルクと幅広いパワーバンドを持つ空冷OHV45度Vツインのエンジンの鼓動は、まるで激しく叩かれたバスドラムのように“ドンドン”とビートを刻み、奏でるBGMは、そう、まさにアメリカン・ロッケンロール! 

さながら3000rpm以下ならヴァン・ヘイレンやエアロスミスのごとくハードでヘヴィに…、そして3000rpmを超えるとブルース・スプリングスティーンのごとくリズミカル&ソウルフルにシャウトし出します。

どうです? イグニッションをオンにして出かけたくなりませんか?

えっ? 寒いから嫌だ?

面倒だから出掛けたくない?

どうせ置く場所なんか無いんだから行かない?

まあ、そんな、つまらないことを言っていないで出掛けてみましょうよ! 

たった1時間のライディングでもビューエルに乗れば、会社であった嫌なことや、些細な事で彼女と喧嘩したこと、なんとなく毎日がつまらない…なんて、そんな微々たることなど全て夜空のむこうにふっ吹き飛ばすことが出来るのです。

なぜなら、頬を撫でるピッとした冷たい空気に頭がピリッと冴え、針の穴に糸を通せば100発100中するぐらいにググンと集中力が増し、車の流れさえもマトリックスの弾丸のようにスローに感じ始め、熱風を伴ったお腹の下のエンジンは、まさしくみかんがのったコタツのごとく腰下を暖めてくれる。ましてやビューエルは、常にライダーの五感へこれでもかとドラムを打ち込んでくるので、それに応えてこちらもアクセルを開け8ビートや16ビートでシャウトし続けるのです。…そんな中で走ると、不思議と大体のことは大したことではなくなってしまうのです。

そして辺りを見渡すと、透き通った大気に包まれた街の中は、宝石をちりばめたがごとく眩い色のイルミネーションで色付き、多くのきれいな女性たちが顔を赤らめながら黒髪をなびかせて歩いています。

さあ、出掛けましょう!

ヘルメットとグローブ、免許書が入った財布、そしてビューエルさえあれば、今宵あなたが主役の素晴らしいナイトステージが開演するのですから…。

イエイ!!

(ロケ地:六本木、品川、東京タワー)

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